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アール・デコ最後の名作:1920年代、第一次大戦の終わりから始まったアール・デコの動きも。1930年代後半の次の大戦を予想 |
させるような、きな臭い雰囲気のなかで、自然に消滅しかかっていました。この濃淡のあるシトリンとダイヤモンドを用いたデコ特有の |
鋭い線をいかしたブローチは、1937年カルティエの ロンドン支店が作らせたもの。これとそっくりなデザインと作りの、ブローチ兼用 |
ティアラが今も残っています。シトリンや、トパーズ、アクアマリンといった大きさのあるはっきりとした色の宝石は1930年代に大変 |
に流行しました。このブローチに見られる全体の幾何学的なシンメトリーといい。シリトンの濃淡の使い分けといい、どこをとっても |
アール・デコのデザインの特徴を、見事に生かした名作です。 |
1998.11.25 婦人画報社 「アンティーク・ジュエリー世界の逸品 著者 山口 遼 |
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マハラジャたちの夢の跡:大きなものではありませんが、中央のサファイア、直径1センチ強、カシミール産の実に見事なものです。 |
色を濃くする為に、高温で焼いたサファイアばかりの昨今では、まず見る事のできない品質のものばかりです。写真中央、石の底 |
の部分に、白いもやのようなものがかすかに見えるでしょう。実はこのサファイアの裏側には、逆Vの字の形に穴が開けられているのです。 |
なんのために?ボタンとして衣服に縫い付ける為です。インド各地に盤踞していたマハラジャあるいはナワブと呼ばれた地方君主たちは、 |
莫大な個人資産を築きあげたことで有名ですが、このサファイアのボタンなどは、その裕福さのレベルをかいま見せてくれるものです。 |
衣服のボタンですから、これ1個ではなかったでしょう。これほどのサファイアを数個もそろえしかも単なる服のボタンにする豪華さを |
思えば、1個だけを持ち帰り、一生懸命にダイヤモンドとともにブローチにした英国人などえらく貧しくみえてしまいませんか。 |
1998.11.25 婦人画報社 アンティーク・ジュエリー世界の逸品 著者 山口 遼 |
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